「一条さん・・・有栖川さんとの婚約、破棄されたそうよ」
「好きでもない人と結婚できないとか・・・」
「この世界に生まれた限り、仕方ないのに」

ヒソヒソと話し声がする。
私の話だって すぐに分かった。


私は あれから、晃哉君の家に泊まらせてもらった。晃哉君は親が海外出張し、祖父である この学園の理事長と一緒に暮らしていた。
理事長は・・・
寄付金が1番多い 一条家の私が泊まりに来て、大歓迎だったそう。

晃哉君に すみません、というと いーって!!!!
と言ってニカッと笑ってくれた。

私は この笑顔が大好き。
悪い事じゃないんだって思わせてくれる。


「結愛・・・」
お昼休み・・・また、有栖川さんが声をかけてきた。

「な、なんですか?」
少し申し訳ない という気持ちを持ちながらも、警戒する。

「今までの態度を改めるよ。
・・・すまなかった」
しゅん・・・とした表情で言う 有栖川さん。

「いえ・・・私も すみませんでした」
暴力を振るった私も悪い。

「ありがとう・・・。僕は君を諦めるよ。
あんなに たくましい彼には勝てないな」
ハハハと笑う有栖川さん。
心からの言葉のような気がして、私も自然と笑みを浮かべた。


「ただ・・・君のお父様は諦めてないようだよ。君の居場所も特定しているらしい」
有栖川さんが また声と顔を暗くした。