「結愛・・・ごきげんよう」
お昼休み・・・有栖川さんが声をかけてきた。

「・・・ごきげんよう」
いつ晃哉君にバラされるか分からない。
ここは・・・有栖川さんの機嫌をとってたらいいのかしら・・・?

「有栖川さん。私、校舎案内しますよ」
立ち上がり、得意の偽物スマイルで声をかける結愛。

「あぁ、ありがとう」
有栖川さんもメガネの奥の目を 細くする。
あちらも偽物スマイルね・・・と思う結愛。
結愛にとって、これは賭け。

晃哉君に私達の関係をバラされるのは避けたい・・・。何だろう。別に隠さなくていいことなのに・・・。

「ここが視聴覚室で その隣が放送室です」
変なの。昨日、晃哉君を案内した時は自然と笑みが出てきてたのに。
有栖川さんとは 偽物スマイルしか出てこない・・・。どうして?

「あっちの部屋は?」
有栖川さんが指差したのは、昨日、晃哉君と指切りげんまん をした部屋。

「・・・あそこは物置になっていて・・・なぜか、誰も近づかないんですよ」
晃哉君と見つけた部屋を知られたくなかった。私達の秘密にしておきたかった。

「そうか。・・・結愛、今日は ありがとう。
こんな お嬢様を嫁にくれるなんて・・・
僕は幸せ者だよ」
心のこもらない 笑顔・・・。晃哉君なら、そんなセリフを言う時、照れくさそうに ニカッと笑うに決まってる。
私は・・・この方は嫌いではない。
けど・・・晃哉君が素晴らしい男性に見えてしまう。