「結愛さん!はよ~っス」
送りの車を降りた時、晃哉君が私に挨拶してきた。もちろん、あの笑顔と共に・・・。

「ごきげんよう。晃哉君」
私も笑を浮かべて返す。
運転手さんは 驚いた表情。

それも無理はない。
一匹狼だった私に話しかけてくる人がいるんだから。

「みなさん、ごきげんよう」
毎朝 同じの教師の挨拶。
「ごきげんよう」と生徒達も返す。

私の一個右斜め前の席の、晃哉君は・・・まだ慣れていないから、しっくり こなそうな顔をしている。
でも 一応、頭を少し下げて 礼をしている。
思わず、ぷぷっと笑ってしまう私。

晃哉君に出会ってから何回笑っただろう。私の表情が増えていくのが自分でも分かる。

その時、教師が また、転校生を紹介した。
「有栖川 高嶺です。どうぞ よろしく」
ペコっと礼をする、礼儀正しい好青年は・・・私の婚約者・・・有栖川 高嶺さんだった。

いつか、お父様が私に紹介した婚約者。
約2日ぶり・・・だけど、私は はっきり覚えている。
黒縁のメガネにビシッと整えた頭髪と制服。あの時はスーツだったけれど、オーラは何一つ変わらなかった。

その時、有栖川さんと目が合った。
有栖川さんは、晃哉君の時と違い、私に少し笑みを残して 案内された自分の席についた。

どうしよう・・・。自分は一条結愛の婚約者だって公表されたら・・・。
晃哉君の耳にも入ってしまう。
別に・・・隠すことでは ないし、この学校のほとんどの人には 婚約者がいる。

でも・・・なぜか、晃哉君には知られたくなかった。