「おい席つけー夏季体育祭の実行委員決めるぞー」

 あれからふわふわとした気分のまま時間が過ぎていった。午前の授業内容なんてほとんど覚えていない。本当、他の人が見たら呆れるくらい私は浮かれていた。

「体育祭か…」

 隣でぽつりと呟いた高崎くん。ああ、今、どんな顔をしているんだろう。楽しみなのか、憂鬱なのか。気になるけど、どうしても今は顔が見れない。さっきの言葉に特に深い意味は無かったとしても、まさか“かわいい”なんて言われると思ってなかったから、こちらはまだ恥ずかしくてどうにかなりそうなのだ。

 担任の声をBGMに、私は空を見上げてぼーっとしていた。体育祭の実行委員なら毎年人気があるし、特に気にしなくてもきっとすぐに決まるだろう。

と、思っていたのに。


「———おい、原田ー。どこ見てるんだー」
「…え」
「原田、実行委員やりなさい」
「は!?やりません!」
「よそ見してた罰だ。じゃあ実行委員は原田と高崎なー。今日放課後残れよー」
(えー!?)

 本当にうちの担任はテキトーにも程がある。私の体育の成績を知ってて言っているんだろうか。いくらよそ見してたとしても成績を見れば、違う人を指名するはずだ。いや、まぁ実行委員は運動するわけではないし関係ないんだけど…

っていうか。

 聞き間違いじゃなかったら、もう一人の実行委員は“高崎くん”って言ってた気がするんだけど。高崎くんと私が体育祭の実行委員!?

「よろしく」

 ぱっと横を見ると、高崎くんはいつ振り向くんだと言わんばかりにずっとこちらを見ていた。また目が合って、薄らと微笑まれた。
え、なに、かっこいいんですけど。

「よ、よろしく…ね」

 ———ああ、だめ。
 やっぱり恥ずかしくてすぐ顔を背けてしまった。また、顔が熱い。隣の席になって、実行委員も一緒で、どんどん急接近している。高崎くんは何とも思っていないだろうけど、かっこよくて人気者な人と仲良くなれるなんて…生きててよかった。

(よし、がんばろう)

 実行委員も、恋愛もね。