「お前ってさ、誰だっけ?」
こう言った。
「………」
まさに絶句。
新くんにこう言われて改めて、新くんが遊び人であるということを自覚した。
彼女に彼女?ってきく彼氏は、この世にいったいどれくらいいるのだろうか。
いや、いるはずがないと信じたい。
「……」
無言になってしまうわたしに彼はさらに追い討ちをかける。
「…彼女だった?名前は?」
ああ、名前も覚えてもらってなかったんだなって…ここまでくると妙に冷静でいられてしまう。
彼が浮気ばかりするのも、遊人なのも、最低なのも、人を好きにならないことも承知の上。
そして、
彼を振り向かせるのは、不可能に近いことだということもちゃんと分かっている。
「えっと、春陽だよ…覚えてる?」
「はるひ…あ、わかった…あの時の」

