あれからどれくらい時間が経ったか分からない。
「海空〜起きろ〜」
頬を抓られ目が覚めた。本当に私は寝ていたらしい。ゆっくり目を開けると机の上には一輪の花があった。
「おそようだね、」
私は花を見つめて晴輝へと視線を移した。“私からでた”花を晴輝は手に取り
「海空、待たせてごめんね、買い物に付き合って欲しいんだ。」
と言った。私は“うん”と頷き晴輝の後ろを目的地まで黙ってついて行った。


私のある病気...嘔吐中枢花被性疾患、世間は“花吐き病”と呼んでいる。両想いにならない限り花は私から可憐に、無惨に咲き乱れるのだ。そして私から出た花たちは私の心を肥料とし大きく花開く。枯れることのない花、みんなは知らない、この苦しみを。


晴輝は家の近くの雑貨屋さんへ行くと言った。何か買うのだろうか、物にそこまでこだわりがなく部屋の家具、いつも使うノート、シャンプー、タオル、晴輝が使うものは大抵私か、晴輝のお母さんが決める。珍しいことがあるんだなぁと考えていると晴輝が足を止めていたことに気付かずぶつかってしまった。
「いたっ、」
慌てて晴輝は私の顔を覗く。
「ごめんごめん、大丈夫?ほら、これ見て、すごく綺麗でしょ?」
そう言って笑顔でガラス製の花瓶をそっと見せてきた。
「うん、すっごく綺麗、でも何に使うの?花でも飾るの?」
「そうだよ、この花瓶に海空の花を飾る。」
私は晴輝が何を言っているのか分からなかった。つまり私が吐いたあの花を?私の花には嫌な、悲しい、苦しい意味がたくさん込められている。
「海空の花はとっても綺麗だよ、こんな花誰にも創れない。俺は海空の花が好き。」