(( Side海空 ))

私は私が嫌いだ。




『このメモを削除しますか?』





空は青く雲一つない、窓の隙間から入ってくる風がマフラーの間を抜けて鼻にあたる。あぁ、カイロでもそろそろ持っていこうかな。なんて考えながら通学バスから外を眺めていた。

学校に着き授業が始まる。「ここは次テストに出すぞ〜」という先生の声が聞こえる。テストなんて何であるのだろう、テストをしてどうして人を比べたがるのだろう、テストに対しての愚痴を吐き捨てながらスマホへと目を落とす。迷いなくメモアプリを開きまた「日課」をこなす。

『今日は快晴、先生や学校はテスト期間モード。相変わらず私は何もしない。いや、何も出来ない。何で生きてるんだろう、あぁ、やっぱり分からない。』

メモアプリを閉じた瞬間メッセージの通知が鳴った。それは幼馴染の中山晴輝からだった。
『海空、今日の放課後空いてる?』
私と晴輝はお母さん同士が小さい頃から仲良しな事もあって生まれた時からずっと一緒に過ごしてきた。マイペースで“ある病気”を持つ私をいつも助けてくれる。私のことを理解してくれる、そんな人だ。私は彼からのメッセージに『うん』とだけ返信した。

あっという間に6時間の授業が終わり放課後になった。私は晴輝の部活が終わるのを教室で待つ。あっ、晴輝今日は外練なのか。何となくグラウンドを眺めていたら目が合った。「おっ、海空!!」と笑顔で手を振る晴輝を見て口パクで『頑張って』と伝え、カバンからスマホを取り出す。カシャッと1枚写真を撮り手を振り返すと照れたように練習に戻って行った。何もすることが無くなった私はまたあの日課を行う。
『今、晴輝の部活が終わるのを待っている。窓の外から見えた晴輝は私に手を振った。うーん、特にすることがないから寝ようかな…』
書き終わる頃には意識を手放していた。