「過失割合は50:50じゃない?」

「事故みたいに言うな」

「私、あんたのこともあの女の人のことも何にも知らないからどっちが悪いかとか知らない」

「冷たいぞ、高校生ぃ〜。少しは慰めてくれてもいいだろぉ」


椅子の背もたれにダラ〜と背を預けてため息を吐く。



記念日とかそういうの凄く気にする彼女だったから欠かさず祝って、誕生日も彼女が欲しいものをあげて、行きたい所に連れてって。

毎日、おはようとおやすみの連絡は欠かさない。

他の女との連絡は一切しない。


束縛は激しく決まりごとは細かく多かったけどそれも飲んでやってきて、その結果がこれだ。




「それって愛なん?」


ブツブツと愚痴っているとそれまで黙っていた高校生はポツリと俺に問う。



あい?愛?

俺は愛してた?
彼女を?



彼女から告白されて、付き合って、体を重ねて、していたことは間違いなく恋人同士だ。

そこに気持ちは?

好きだったさ。だからどんなに我儘なことでも我慢して聞いて。


いや、何処が好きだった?
彼女じゃないとダメだったのか?




「……俺はどうやら彼女のいう通り最低だったらしい」


彼女は気付いていたんだろうか。

俺の気持ちの本当を。



今まで俺が恋愛だと思っていたものはそうではなかったのか。

そんなことを高校生に気付かされるとは。


あぁ、過失割合は100:0だ。



「まぁまぁ、そう落ち込まないでさ、人生山あり谷あり。色んな経験して大人になっていくのさ」

「いや、俺もう25なんだけど」


憐れ、とでも言いたげにポンと俺の肩に手を置く高校生をジド目で睨んでそう言えば少し驚いたように目を大きくした。

目ぇ、でけーなぁ。てか睫毛長ぇ。




「随分、童顔なんだね」

「君こそ、高校生の癖に平日の昼間からこんなとこで何やってんだよ」

「だから言ってんじゃん。人生、色んな経験して大人になるんだって!サボりも経験しとかないとね」



ケラケラっと高校生が笑う。

その眩しい程の笑顔に俺は



“きゅん”



……え??



なんだなんだなんだ!!!


これが俗に言う胸キュンか!?




「…?どした?」


うんともすんとも言わなくなった俺に高校生は不思議そうに覗き込む。


もうダメだ。一度自覚してしまえばどんな行動も天使にしか見えない。


まさか25にもなって、これを知ることとなるとは。




ガシッと高校生の腕を掴むと自分の方へと引き寄せる。



「……なんすか、これ」

「抱擁です」

「それ、は、分かってるんですが」

「人生何事も経験だろ?」

「お巡りさーん!!!」





はつこい。しました。