「サイッテー!!」


バシャッと音を立てて水が俺にぶち当たる。

ポタポタと頬を伝ってテーブルに水滴が落ちるのを何処か他人事の様に眺めていると、俺に水をぶっ掛けた女は高そうなバッグを掴んで店を出ていった。


おーい。この状況どうしてくれんだよ〜。

お洒落なカフェでこれはないぜ。





「オニーサンだいじょーぶ?」


と、この状況をどうしたものかと考えているところに隣から声が掛かる。


隣の席に座っていた女子高生。




「これが大丈夫に見えたら俺は逆に君こそ大丈夫かと問いたい」

「大丈夫そうじゃん」


店長ー、なんかタオルないー?と席を立って奥に行く女子高生。


なんてことだ。
平日の昼間からこんな修羅場のような現状を作っているのがこの俺だなんて。

あぁ、みなさん、俺を見ないで下さい。そこの昼休み中のOLさんも、そこのママ友さんも、あぁ、子供も興味深々に見るんじゃない!!


頬を伝う水滴はきっと水じゃなく、俺の涙だ。間違いない。

と馬鹿なことを考えていると頭の上からバサァと何かが被さる。



「水も滴るいい男もいいけど、そのままだと風邪引くよ」


いつの間にやら戻ってきた女子高生が俺の頭に被せたのは真っ白なタオル。


「あ、ありがとう」

「別に?そこらへんにあったの適当にひったくって来たから何拭いてるか分かんないタオルでよければ?」


思わず水を拭いていた手を止める。


いい子だかそうじゃないんだか分からないが、このくそがき!!


もうヤケになって水を拭き取る。



「まぁまぁ、そんな荒れなくても」


「どー思う?付き合ってた彼女が浮気してたから別れ話したら水バシャンだよ」



俺が水をぶっかけられたのは文字の通りの理由だ。

昨晩、仕事終わりに友人と飲んでその帰りに恋人が知らない男とホテルに入っていったのを見た。

以上だ。