「マネージャー!アイシング!」
「マネージャー!ストレッチ手伝って!」
「ドリンク作って!」

「はい!すぐ行きます!!」

入部から一週間、
わたしはすっかり野球部のマネージャーらしく…なってはいなかった。

仕事は右も左も分からない状態で、
部員にどうしたらいいかを聞きながらやるしかなくて。
野球に1番身近で関われるのは楽しくて、仕事は嫌だとは思わなかったけど…やっぱり、役立たずな気がして。

そんな心の不安と、普通に体の疲労とで、帰り道はへとへと。
暗い夜道は危ないからと、一年生部員と一緒に帰るのは楽しいんだけどね…

なんて思いながら、着替えを済ませて外に出ると、いつものようにみんなが待っていた。

一年生部員を紹介すると、
「おー田中、遅いよ」
背が高くてひょろっと細いこいつは桐谷哲也。外野手。外野手はあと、佐藤優と、伊藤幸大がいる。
「待ちくたびれたよ」と笑うこいつは木下春樹。キャッチャー志望。
そういうこと言うからモテねえんだよ、と春樹の肩を叩くのが、遠藤修也。
ショート。
その後ろでこっちを見ながらケラケラ笑っているのが、
吉川弘毅、セカンド志望と
田上光陽、ファースト志望、
藤田礼央、サード志望。
そして
1番後ろで私を手招いて、
「早く帰ろうぜ、千春」
って笑うのが、陽太。

一年生は、この9人。

「はいはい、待っててくれてありがとうね」

みんなの所に駆け寄りながら、わたしはそう言って笑った。