放課後になると、クラスメイトたちもみんな、思い思いの部活に行く。
授業中に問題を教えてあげたことから仲良くなった、前の席の千葉優希が私の肩を叩いていう。

「ね、田中さんはさ…」
「あ、千春でいいよ、その方が嬉しい」
振り向いてそう答えると、優希は嬉しそうな顔で笑った。女の子らしい可愛い子だと思う。
「おっけー、千春ね。
千春はさ、何部に行くの?」
「私は野球部。千葉…優希は?」
「あたしはね、吹部に行く!
夏、千春たちの応援できるのが楽しみだよ!じゃ、また明日ね!」
「うん!」

廊下を歩いていると、後ろから背中を叩かれた。だれ、と振り向くと、やっぱりそこにいたのは…

「もー、森田くん!」
「あはは、ごめんごめん。
それよりさ、さっき千葉さんと仲よさそうに話してたじゃん」
「うん、仲良くなった」

彼は良かったなと私の肩を叩き、行こうぜと走り出す。
「いや走らなくてもいいじゃん!ちょっと、森田くん!」
「陽太!俺の名前!」
「は!?陽太って呼べってこと?」
そんな、恥ずかしいよと顔を赤らめる私に、またさっきのような意地悪な笑顔を浮かべて彼は言う。

「その通り!」
「ああもう、もり…陽太って、ほんとばか」

出会ったばかりなのに、なんでだろう。陽太って、人との距離を詰める天才なのかな。もうすっかり私も打ち解けちゃったよ。

そんなことを思って、なんだかムカついて、私はもう一回言った。

「陽太のばーか!」