人懐っこい彼の笑顔に、私もつられて笑顔になる。握手を交わした彼の手が、ゴツゴツしていて、なんだか懐かしい気持ちになった。

その時私は思い出した。
野球を小学校からやっている兄の大樹の手は、こんな感じで硬くて大きかった。ピッチャーの手は自然とそうなるんだと大樹は言っていた。

「ねぇ、森岡くんって、野球やってたりした?」
「え?」
「あ、ごめん違った?」

勘が外れて恥ずかしく思いながら、私は忘れて、と手を顔の前で振る。

「いや、大当たり。俺、ピッチャーなんだ。野球部入ろうと思ってるしね」
「え、そうなの!?」
「うん。田中さん、なんでわかったの?」
不思議そうに首をかしげる彼を笑って、私は兄のことを説明した。

「なるほど…それでか。
じゃあ、田中さんも野球、好きなの?」
「大好き。私、マネージャー行こうと思ってるんだ!」
そう口にした途端、彼の顔がぱっと輝いた。

「まじで!?やば、すげえ嬉しい!」
「そんなに!?」
「だって俺、もう同い年の部員で1番マネージャーと仲良いってことになるじゃんか!」
はしゃぐ彼の顔を見ていたら、
馬鹿、とか呆れた、とか言えなくなって、仲良いって言ってくれたことが素直に嬉しくて、私は大きな声で笑った。