妖と人と

「…ん?」



平熱だ。

熱くない。



先程は苦しそうだったのが、今は静かだ。



落ち着いたのか?

いや、でも何故…。



「!?」



「風魔?」



黒墨の華が不思議そうにした直後。



「巴衛っ、言ったはずだよ。見つけてって。見つけるって」

ーギュウっ



心なしか、熱を帯びた視線を私に向け抱きしめながら凭れてくる少年。



…熱いな。

その体は先程より尚熱く、体温自体が上がっているのが分かった。



「巴衛、会いたかったっ」



っ…。



涙を潤ませた瞳でそう言ってくる少年。



その顔はとても嬉しそうがら、泣くのを我慢しているような表情だった。



あぁ…。

「ちょっ、巡!」



黒墨の華の息子がそう叫ぶ。



だが、聞こえはしていないだろう。



私の事しか見ていない。



「…そうか」



「…」

だから、私は首を横に振った。



「…え?」



少し驚いたようなキョトンとした顔。



そんな少年を、首筋に手刀で意識を手放させた。



「何…で…」

ードサッ



悲しそうな顔と声音を最後に意識を手放し、そのまま倒れた身体は受け止めた。



背後や隣で呆然としている気配がする。



当然だろう。



奪うなどと考えていた私だ。



しかもさっき体温が上昇したのは、感情によって風魔の施していた術全てが効力を失い、

一種の暴走状態と言っても過言でない状態になっていたから。



そうなったと思えば、私が前触れも無く気絶させたのだ。



何が起こったのか考えているのだろう。



…。
ースリっ



何もするつもりなど無かったが、抱き締め少年の頬に顔を寄せた。