妖と人と

あぁ…今すぐ奪いたい。



ー「!?」



手の届く所に居る。

私に触れている。



攫うことなど簡単だ。



私と少年以外が、私の考えを察したのか身構えたのが分かった。



…ずっと、ずっと待っていた。 



曖昧な記憶の中、私に笑い掛けてくる一人の人の子。



私を置いて逝ってしまった人の子。



まだ幼い成人も迎えず、当時でも哀れまれる年齢だった。



…曖昧だ。

だがそれでも、『一緒にいたい』と言われたことは覚えている。



『来世でも、僕見つけるよ。妖怪さんのこと』



『妖怪さんの名前、巴衛って書くんだね。僕はザザッ〜だよ』



『見つけたいけど、いつ見つけれるか分からかないから、探してほしいな』



『一緒にいたい…な。…でも、もう無…』





溢れ掛けた記憶を封じる。



そして、思い直す。