妖と人と

一人くらい気付いても良いはずだがな。



「来た来た」



ー「!」



呑気な門川の声は私に向けられたもの。

だが静かな室内の中、突然出入口に向けられた意味を知ろうとこちらを見た一同。



室内は4家の当主と、15、6、7の子供らがいた。



「え…誰?」



「父さんの知り合い…」



その中の2人が声を出し、内一人は私を知り合いと認識した。

恐らく門川の息子だろう。



黒い髪、瞳の整った容姿が門川と似ている。

怪訝な視線を向けて来るが、敵意はないようだ。



少し視線をズラせば、門川意外の当主3人が唖然としている。



「門川、貴方って人は…」



彼岸花の様に赤い緋色の真っ直ぐな胸下までの髪。

スッと切れ長タレ目の焦げ茶の瞳。



黒墨の現当主であり、華。

名を黒墨花織は苦笑いをして額を抑え…



「さっきの文…こういうことだった訳」



天を仰ぐ風魔の現当主。

名を風間一二三は脱力して壁に凭れていた。



そんな2人の声の後、門川に視線が集中する。



それを察したのか、それとも待っていたのか。



「フフッそうですよ。適任ですし」



「適任って、何の?」



「あぁそれはも」

「いいや、俺は反対だ」



ー「え?」

門川の言葉を遮ったのは、深山だった。



名を深山夏目。

金髪茶目の



「確かに技術や知識は優れている。だが、この子の事は人で片付けた方がいい」



………。



「まぁ、一理ありはしますけれど」



「母さん?」



近くにいた少年が黒墨の華のことをそう呼んだ。



髪は黒く、瞳が緋色をしている少年だ。

黒墨の華の…夫の方に寄ったな。



大きく垂れ目な感じと、中性的な容姿。

まぁ今は女装をして、制服らしきものはスカートを穿いて居るが。