水野さんが一人、ひたすら妄想話に熱中していると遅れていた総一郎さんがやってきて、今までに聞いたこともないような低い声でそう言った。

驚いた表情の水野さんと松原くん。そんな二人を無視するように私の手を取り、歩みを進める総一郎さん。


「ま、待ってください。次期社長、手を繋ぐ相手間違えてますよ」


後ろから追いかけるようにして私たちに追いついた水野さんは私と総一郎さんの手を離そうとした。松原くんはまだ後ろにいる。


「間違ってないけど。今日は優衣とのデートだし、ダブルデートって俺たちのデートに君たちが便乗するってことだよね？」


「ち、違います。何言ってるんですか？勝手なこと言わないでください！」


ものすごい剣幕で囃し立て、私を鋭い眼差しで睨み付ける水野さん。それを庇うようにして、総一郎さんは私の前に立ってくれた。


「勝手なこと？俺はこないだ君たちがやったことをそっくりそのままお返ししただけだけど？優衣に何も言わせないように二人で勝手なこと言って決めつけたんじゃなかった？」