「優衣、明日なんだけどゆっくりできそうなんだ。だから、どこかに出かけない?」
金曜の夜、ソウさんからかかって来た電話。
気持ちを認めた私は、ソウさんからの連絡も普通に取るようになった。
とはいえ、ソウさんも就任したばかりで忙しい日々。
なので、お誘いの電話は初めてで嬉しくて、気持ちが舞い上がった。
でも、残念なことに明日はちょうど兄の家に行くと、約束まで取り付けていたから渋々断るしかなかった。
「すみません。明日はちょっと。一人暮らしの兄の家に様子を見てきてほしいと頼まれていて、兄にも前もって休暇届を出してもらってたんです」
「そうなんだ……あっ、じゃあさ、嘘を本当にしようか?」
「嘘を本当に?ですか?」
ソウさんの声が落胆からワクワクしたような声に変わった。
嘘を本当にってどういうことなんだろう?
「そう。俺も明日行っていい?優衣のお兄さんのところ。で友達になったら嘘じゃなくなるからさ。兄友のこと」
「えっ?い、いいんですか?隣県だからちょっと遠いんですけど大丈夫ですか?」
最初は戸惑ったし、申し訳ないと思ったけれど、ソウさんの提案に少しワクワクした。
嘘を本当にってそういうことか。
「全然。むしろ優衣と一緒に遠出できるなら楽しみ。明日、朝九時くらいに迎えに行くよ」
ソウさんに会えて、尚且つ、うちのお兄ちゃんと友達になってくれるなら一石二鳥。
嬉しくて電話の声がどんどん明るくなる。
「ありがとうございます。楽しみにしていますね」
「うん、俺も楽しみにしてる。じゃあ明日ね」

