運命の出会いは誓いのキスから 《番外編追加》

「ねえ、聞いたんだけど、影山さんと次期社長って、知り合いなんだって?!」


隣の部署の人たちまでもが私のデスクを囲み、次から次へと聞いてくる。

やっぱり次期社長は女性社員の憧れの的で、中には、連絡先を教えてほしいとか紹介してほしいとかの依頼まであった。


「さすがに今は昔の知り合いとはいえ、次期社長の連絡先を勝手に教えたり、紹介するのは申し訳ありませんが、できません」

この模範回答は、さっきソウさんが考えてくれた。


『俺は、優衣しかいらないからもし何か言われたらそう言って断ってね』と。



それから数日間で一気に噂は駆け巡り、他部署の知らない人たちまでもが朝やお昼休み、退社まで押し寄せて、大変だった。


「あっ、優衣お疲れ様」


でも、その噂が功を制した。


社内で堂々とソウさんがこうやって話しかけてきても、羨望の眼差しや友達ですと便乗してくる人たちはいても、直接私に意地悪を言ってきたりする人はいなかった。



そして噂も本社内で公認となった頃、たまたま実家から連絡があり、兄を見てきてほしいと言われた。


私の兄は私より五つ上の二十九歳。私と違い、優秀な外科医で隣県の総合病院で働いている。


休む暇なく働いている兄のことを母親は気にかけているけれど、祖母の介護などで家を空けられないからと半年に一度様子を見てきてほしいと頼んでくるのだった。