『……あの、私、蓮見さんのこと、ずっと好きだったんです。なのでお付き合いしていただけませんか?』


またか。俺のことも知りもしないで告白してくるなんて。ヘドが出る。

この頃の俺はそんなことばかり思っていた。


父親に修行してこいと行かされた会社で些細なことから俺が音羽堂の御曹司だということがバレた。
それからは周りの見る目がガラッと変わった。告白も増えた。


『……悪いけど今は誰とも付き合う気ないんだ、俺』


どこの誰かも知らない女に告白されても嬉しくもなんともない。むしろ迷惑だ。

ただ、とりあえずここでは穏便にと思い、お決まりのセリフを返した。


『遊びでもいいんです。音羽堂の御曹司に見初められたい』


それでも納得せず、あろうことか女の武器を擦り付けるようにし、縋り付いてくる女。
遊びでもいいなんて言われて、気分が悪い。


くだらない。
こんな女ばかりだ、俺の周りは。


昔はそんな誘いに乗ったりもしたが、今は違う。女をひっぺがして『必要ないから』と言い残し、そこを離れた。


優衣と出会うまでの俺は、誰かを好きになるなんてこともないし、本当に他人を見下す冷めた人間だった。