「いいよ、開けて」


でも、ちゃんと総一郎さんの声がして、安心した。良かった、夢じゃなかったんだって。

ゆっくりと目を開けると総一郎さんが持っていた紙袋の中からプラスチックのケーキの箱を取り出した。


「採用したよ。この秋から販売されるんだ、ミルクレープロールケーキ」


そう、それはちゃんと商品化してあったミルクレープロールケーキだった。あの日、二人で作ったものよりも、とても形になっている。


「優衣と二人で作って、やっぱり商品化したいって思ったんだ。ちょっと時間はかかっちゃったけど優衣に一番に見せたくて」


「す、すごいです。嬉しい。本当にありがとうございます、総一郎さん」


「食べようか、でも家に帰ってからの方がいいか」


言いたい。今、私から言いたい。

ロールケーキを紙袋の中にしまい、帰ろうかと私の手を取った総一郎さんを私は止めた。