運命の出会いは誓いのキスから 《番外編追加》

「宣戦布告されても、譲るつもりないよ、俺」


私の手を掴む無表情の総一郎さん。まさかこんなに早く来てくれるとは思わなかった。でも、総一郎さんに掴まれた手は力が強くて痛みさえ伴う。


きっと総一郎さんは誤解している。だから怒ってるんだ。一方の的場くんは、総一郎さんの姿を見て、驚愕していた。


「う、うそだろ?影山の彼氏って、じ、次期社長?!」


大きな声で驚く的場くんに、行き交う人たちも何事かと見て行く。渚はこの自体に泣きそうになっているし、総一郎さんは怒っている。

なんとかこの場を収めるしかない。


「そうなの。秘密の恋だから大ごとにしないで。か、帰りましょ、総一郎さん。ほら、渚もうちに来るって約束したでしょ?ごめんね、的場くん。じゃあね」


渚を手招きで呼び、総一郎さんを急かす。声や表情は他の人からすれば普段通りに見えるかもしれない。でも、私には明らかに怒っているのがひしひしと伝わってきた。


断る渚を家まで送り届け、帰りの車の中、私はずっと俯いていた。的場くんに見られてしまった。


もしかしたら、わたしの忠告も無視して、バラしてしまうかもしれない。


でも、今はそれより、こんなにも怒らせてしまった総一郎さんをどうやったらいつもの総一郎さんに戻すのかわからなくて、俯くしかできなかった。