私は今、総一郎さんに甘えてはいけないと一人部屋を使わせてもらっている。


今までは食事もお風呂も寝るときも、帰ってからはずっと一緒にいたけれど、今月からは別々でお願いした。


総一郎さんは、「了解」と言ってくれた。
とにかく今月だけは自分の力を試してみたい。そう話すと渚は、はーっと大きくため息をついた。


「なんか、本当優衣って真面目。私ならそんなこと気にしなくてむしろ両手を挙げて、大喜びするけどなあ。うちなんて、せっかくの結婚式なのに、ドレスも安いほうがいいだの、なんだのケチつけられて、嫌になりそう」


「何、言ってんの。結婚式楽しみにしてるからね」


「はあ、最近は憂鬱だよ。決めなきゃいけないことが多いし、ケンカばかりだしね」


渚の結婚式は今年の秋。それまでいろいろと大変そうだけれど、本当に楽しみ。

今年はお兄ちゃんの結婚式もあるし、それに、自信をつけたら私だって、もう迷わない。


「ねえ、そういや同期の的場くん、本社に営業として異動してくるらしいよ」


渚が二つ目のサンドイッチをペリペリと開けながら、思い出したように切り出した。