二月になり、総一郎さんは、契約の件で役員からも信頼を得ることができたと聞いた。


でも、四月から社長に就任するものだと思っていたけれど、現社長の意向でとりあえず、次期社長として仕事を学んでほしいらしく、まだ次期社長のまま。

あくまでも社長は現社長。


現社長は、総一郎さんを甘やかさないために、自分のところではなく、知り合いの社長の会社で仕事を学ばせたりするなど、身内にも厳しいところがあると総一郎さんが言っていた。


『でも、父親の元でスネかじっていたら、それこそ俺、仕事もなめてたような気がするからあの経験はありがたかったんだ』


総一郎さんは、たまに自分の話をしてすれるけれど決まって、『聞かせられるようなものじゃないんだけど』と言葉を濁す。


だからその話も結局それ以上聞くことは出来なかった。