まぁ、水浸しになって1からやり直しとなった拭き掃除は置いておいて。

大正の香りと浪漫漂う部屋のソファで、セレナと少女は紅茶を嗜む。

「大掃除は順調かしら?」

今し方バケツをぶっ散らかした娘にそれを聞くか、セレナよ。

ドジっ子は相変わらずだな。

「大洪水なのですわお母様、乙女の心は花びらのように散り乱れているのですわ」

ティーカップを手に、娘は、ほぅ…と溜息をつく。

そう、セレナの娘。

夕城家指南役、夕城 武(ゆうしろ たける)とセレナの間に生まれた長女、名を夕城 エレナ(ゆうしろ エレナ)という。

何故かうさぎグッズ販売や音楽関係に足を突っ込み、着々と有名企業に進出しているグローバルな、どこか財閥の香りさえする夕城分家で生まれ育った少女。

無論、彼女もまた夕城家指南役という顔も併せ持つ。