話は少しばかり遡る。

去る年の瀬。

部屋のドアがノックされる。

「いるかしら?」

夕城 セレナ(ゆうしろ セレナ)は控え目にドアを開けた。

手にはティーセット。

「紅茶の時間にしない?大掃除も疲れたでしょう?」

その言葉に。

「名案ですわっ」

かの少女は弾けるように顔を上げた。

毛先が少しカールしたリボンつきの黒髪ポニーテール、黒々としたうさぎみたいな大きい瞳。

赤系の華やかな袴にブーツ、大掃除という事もあって、今は襷掛けしている。

手にした雑巾を置き、立ち上がった少女は。

「あっ」

優雅に華麗に凛々しいまでに、足元の水なみなみなバケツを蹴倒した。