「…………そこまでです」

か細い、しかし凛とした声が、重く息苦しい空気に包まれた闇に響いた。

その場にいた全員が振り向く。

「……」

銀髪を後ろで括った、無表情の人物がそこには立っていた。

身を包むのは、古典に語られる牛若丸を彷彿とさせるような装束。

中性的な顔立ちからは、一目で性別を推し量る事は出来ない。

「先輩…それ以上本気を出されるようならば、この場で真名を語った上で…」

印を結ぶその人物に対し。

「分かっている」

先輩は迷う事なく背を向けた。

「俺は稽古の途中だ。お前達と事を構える気は毛頭ない…失礼する」