甲斐が記憶の糸を辿る。

ヒノモト自警団の沖田 蒼次郎(おきた そうじろう)から聞いた事がある。

確か将軍は、奥方である古奈美とも天神学園で出会ったそうだ。

まだ戊辰大戦の禍が冷めやらぬヒノモトから落ち延びてきた古奈美と相思相愛となり、時に古奈美の危機を救い、時にヒノモトそのものの危機をも救いながら、やがては許婚となり、ヒノモトの将軍の座を継ぐまでになった。

ヒノモトではリュートの事を、『ヒノモトの勇者』と呼ぶ民衆も少なくない。

留学と落ち延びたという違いこそあるものの、古奈美の娘である美緒も、同じ道を選んだという訳か。

「承知致しました」

甲斐は畳に両手をつく。

「龍斗公がご息女、美緒様の御身の安全は、この甲斐めが命に代えてもお守り致します故、何卒ご安心を」

「かてぇ!そしてウゼェ!」

シッシッと手で払うジェスチャーをするリュート。