「いつからある木なんだ?」

甲斐が近づこうとする。

しかし。

「止まって下さい」

穏やかに、抑揚なく、だが警告の色を帯びて。

言葉が返ってきた。

「……これは菩提を弔う為の樹ですから……あまり踏み入ってほしくないのです…」

「…そうだったのか」

言われた通り、甲斐は足を止める。

「そうとは知らず、悪い事をしてしまった。すまない」

姿勢を正し、首を下げるも、相手は何も言わない。

甲斐は気にしない。

返事が欲しかった訳ではないので構わない。

「ここの事は他言せずにいよう。その方が、君も気苦労がなくていいだろう」

「……」