止めなければいけない。

目の見えないテリアにも、この修行の危険性は肌で感じ取れた。

人外としての特別な力を持つ2人が、紀州1人を攻撃する。

猛攻に耐えきれずに私刑の如く嬲り殺しに遭うか、追い詰められる事によってまた犬神の力が覚醒して暴走するか。

どちらに転んでも最悪の結末。

こんなのは修行でも何でもない。

まさに化け物同士の殺し合いでしかない。

誰かを呼びに行かなければ。

そう思って踵を返したテリアの背後にいたのは。

「!」

既に周囲に中規模結界を張り終えた白雪だった。

相変わらずの無表情。

しかしその顔には緊張感が漂っている。

「覚えておくといい…」

白雪は静かに告げる。

「人外の花嫁を目指すなら……心労祟って倒れるくらい覚悟しておく事……」