天神学園のお忍びな面々

…そこからは、一瞬の出来事だった。

踵を返した豆柴の腕が引かれる。

「な、何です…」

何か言おうとした豆柴よりも早く、振り向かせ、腰に手を回し、彼女の顎を摑み、クイと上向かせ。

「っっっっっ…」

気が付けば、豆柴は息がかかるほどに牡丹の顔を近付けられていた。

唇を奪われるのではないか。

熱く抱擁されるのではないか。

そんな距離だ。

不覚にも胸の鼓動が収まらない。

篭絡する筈のくノ一が、篭絡されては笑い話にもならない。

だが、腕を振り解けない。