そんな訳で、男子は鼻の下を伸ばし、女子はやたらモジモジするという奇妙な嬉し恥ずかしの構図が出来上がってしまった臨海学校。

まずは木造校舎や寄宿舎の中に入ってみる訳だが。

「うわ…」

椿が思わず鼻を摘まむ。

カビと埃の匂い。

流石吸血鬼のヴラドお気に入りの別荘だ。

ジメジメして陰気臭くて薄暗くて最悪。

只の廃墟だ。

「このような所に寝泊まりするのですか」

マモルが顔を顰める。

エアコンがないだけなら、夜は気温が下がるのでまだいいが、この不衛生さは何とかしなければ。

「それじゃあ」

美緒がポンと手を叩く。

「臨海学校初日は、この校舎と寄宿舎の大掃除を皆でやりましょう」