校庭を転がる牡丹と椿。

「くっ」

リュークは為す術もなく、その様子を見守るしかなかった。

まだ、超ヒノモト人への自在の変化はできない。

彼の持ち技では、犬神ほどの化け物に対抗する策はそれしかないというのに。

「こんな時に発動できないとは…!」

次なる標的をリュークに定め、突進してくる紀州。

嘗ての同門を見る眼ではない。

目に映るものを手当たり次第引き裂き、噛み千切る狂犬だ。

渾身の動きで回避を試みるも。

「うぐあ!」

リュークは肩口に食いつかれ、校舎の壁に叩き付けられ、強靱な四肢でコンクリートの壁をも駆け登る紀州によって引きずり回される!

重度の擦過傷や打撲で呻くリューク。

彼を屋上まで引きずり回した紀州は、そのまま急降下で地面に叩き付けようとして。

「!?」

屋上で待ち構えていたチャイナビューティの猛虎硬爬山により、横っ面を打ち据えられた。

「無事か、リューク」

振り向き様にリカが言う。

「身を隠していろ。ここからは私が引き受ける」

「し、しかし…老師…」

苦痛に顔を顰めながらリュークが言う。

リカは強い。

リュークなど太刀打ちも出来ないほどの強さだろう。

だが、如何にリカとてあの戊辰大戦の亡霊は…。

「来い犬コロ」

リカが手招きする。

「マスターロンニャンの遺志を継ぐ者が、天神学園を守ってやる」