紀州の爪の一撃は、レオを吹き飛ばした余波で学食の壁をも破壊する。

飛び散る窓ガラス、崩落するコンクリートの壁。

各教室で昼食をとっていた生徒達も避難を開始し、校内には非常ベルが鳴り響く。

校庭に避難集合する生徒達。

その目の前で。

「――――――――――っっっ!」

壁を貫通して出てきた牡丹、椿、リュークと、紀州との激しい応酬が繰り広げられる。

「椿、斬雨だ」

柊で紀州の爪を懸命に捌きながら牡丹が言う。

「隙を作れ、俺が斬鉄・極を放つ」

「僕の斬鉄を見せ技にするなんて心外だけど…」

つべこべ言っている暇はない。

椿は四季を振るう。

夕城流の極意である斬鉄を、連撃に乗せて放つ。

鉄をも斬る斬撃の乱れ打ちだ。

その速さと鋭さは凄まじく、降りしきる雨さえも切り裂いて雨が止んだように見えるという事から、この名が付けられた。

流石の紀州…犬神も、その鋭利なる刃にはオーラをも切り裂かれて流血をもたらされる。

怯む四肢の獣。

そこへ。

「推して参る」

全身全霊を込めた斬撃を振るう牡丹。

斬鉄・極。

斬鉄・極は、受け太刀した色彩銘刀さえも両断する。

つまり斬れぬものなど皆無という事。

故に対抗策は回避しか存在しないという代物だ。

紀州は。

「!?」

回避した。

信じ難いほどの高速で。

神速というには禍々しく、獣というには速過ぎる身のこなしで。

まさしく魔獣。

まだ未完成の斬鉄・極では、犬神と化した紀州を捉える事叶わず。

「――――――――――っっっ!」

咆哮によって委縮した牡丹と椿を、後ろ足の蹴りで双方とも吹き飛ばす!