甲斐は慌てたように美緒を見た。

「ち、違いますよ!俺だって護衛部隊『番犬』に入る前までは、自分の生まれすら知らない孤児でしたから!他人の生まれをどうこう言うつもりはありませんよ!」

「え…っ」

美緒がハッとする。

「ご…ごめんなさい…余計な事を言わせちゃった…私そんなつもりじゃ…」

「あぁぁぁああ、いえ、そうではなくてですね!」

怒ったりシュンとなったりする美緒の反応に、甲斐は尚も慌てる。

「俺の事はどうでもいいのです!俺が気になるのは…」

甲斐はもう一度、既に遠く小さくしか見えない先輩の後ろ姿を見た。

「奴がどんな流派で、どんな修業を積んできて、あの強さを得たのか…という事なんです」