次の瞬間、走り出る紀州。

番犬として鍛え上げた彼の動きが俊敏なのは、誰もが予想していた。

しかしこの動きは、人間として鍛錬した域を大きく逸脱している!

夕城流でも最速であろうマモルが目を見張るほどの動きで男子生徒との間合いを詰め。

「この野郎!」

掌打で男子生徒を殴りつける!

テーブルを、椅子を、薙ぎ倒しながら吹っ飛んでいく男子生徒。

一撃で失神したのは言うまでもない。

が。

紀州は止まる事なく、更なる追い打ちを男子生徒に仕掛けようとする。

完全に伸びている彼に対し、跳躍から馬乗りになって、殴打を繰り出そうとする!

「紀州君!」

素早くテリアがそこに割って入り、紀州を正気に戻そうとするものの。

「きゃあっ!」

紀州は止まる事なく、テリアさえも薙ぎ倒そうとする!

それを。

「!?」

見えない糸のようなものが、紀州を絡め取って止めた。

白雪の行使した、拘束結界だ。