「テリアちゃんも、何か食べるかい?」

厨房から、学食のおばちゃんがニコニコしながら言う。

「いえ…私は大丈夫です、お気遣い有り難うございます」

礼儀正しく言うテリア。

こういう礼節のある所は、番犬の先輩のリュークに教わったのだろうか。

「まぁ、よく出来た子だねぇ。紀州君はいい妹持ったねぇ」

「いやおばちゃん、妹って訳じゃねぇんだよ。妹みてぇなもんだけどな」

紀州が笑い、テリアも控えめにコクコク頷く。

…時刻は正午。

午前の授業が終わり、他の生徒達も学食に殺到してくる。

食券売り場は、さながら戦場のようだ。

特に男子生徒達の争奪戦が凄い。

武道の達人も多い天神学園の食券争奪は、まるで訓練された兵士達のやり取りのようだ。