リュートは扇子をパタンと閉じる。

「そもそも間者だ何だって疑うくらいなら、俺んとこにこうやって呼び寄せたりしねぇよ」

「……」

それもそうかと思案する青年。

リュートの代になって、勅使河原将軍家を護衛する為に結成された直属の護衛部隊『番犬』。

中でも彼…甲斐(かい)に、リュートは全幅の信頼を置いていた。

「でな」

リュートは少し身を乗り出す。

「オメェに、チョイ頼みてぇ事あんだけどよ」

「……」

甲斐が無言で頷く。

「ウチの子のな、様子見に行って欲しいんだよ。ついでに長期の護衛も頼みてぇ。具体的には1年くらいになっかな」