天神学園のお忍びな面々

夕城道場の雑巾がけのつもりがバケツの水を引っ繰り返して水浸しにし、戸締まりのつもりが鍵を側溝に落として大わらわ。

先に帰る事30分前の夕城三人衆に、エレナは漸く追い付こうとしていた。

大正ロマン溢れる袴はびしょ濡れの泥だらけだ。

どうしてこうなった。

「あら?」

駆け足で校門の所まで来たエレナは、そこで人だかりに気付く。

レオ、ディア、白雪、夕城三人衆、豆柴、リカちゃん先生や腹出し爆睡部の2人もいる。

人混みの中心で、リュークが刀の切っ先を突き付けられていた。

刃を向けるのは…。

「お父様っ?」

エレナ、黒髪ポニーテールが立ち上がるほどに驚愕。

…天神学園に籍を置く者ならば、一時代を築いた龍乃一味を知らぬ者はいるまい。

その当時の生徒会役員・龍乃一味で行事実行委員を担当していたのがエレナの父・夕城 武(ゆうしろ たける)その人だ。

先代夕城流指南役。

エレナの愛刀菩薩の前の所有者であり、現在は夕城 龍之介の作刀『韋駄天』を所有。

彼の修行時代の愛刀である。

その韋駄天を。

「おい」

武は迷いなくリュークに向けた。

「貴様だな、愛娘をふった金髪馬の骨糞野郎は」