ジャリ、と。

下駄が地面を踏み締める。

その男の姿を見とめ、まず最初に気付いた椿がハッとした。

「御無沙汰しています、指南役」

「止せ」

小柄なその男は、椿を制する。

「指南役はいまやエレナだ。俺に言う台詞ではあるまい」

牡丹もその男に気付いて一礼し、蘭丸はウエッ、と顔を顰めた。

「ほう、真太郎のとこの小倅は多少礼儀を身に着けたか。龍馬のとこのはまだまだだな。エレナに礼節は教わらなかったか?」

これだから苦手なんだよな、と。

蘭丸は内心舌を出す。

「で…」

男の鋭い視線が、椿を射抜いた。

「何処だ椿。お前を冷水に放り込み、エレナをふったという金髪馬の骨糞野郎は」