腹を押さえ、苦痛に呻く椿。

その椿を、リュークは敢えて見下ろす。

屈辱的な構図。

才に恵まれ、何事もそつなくこなし、後れを取る事など知らなかった椿が、他者から見下ろされる事など初めての事かもしれない。

「…悔しさとはそういうものだ」

リュークは言った。

「屈辱、怒り、悔しさ。己の不甲斐なさを感じ、己を這い蹲らせた相手を倒したいと思う。椿、お前に足りなかったものは、そういう挫折なのかもしれないな」

そう言ってリュークは、まだダメージの抜けきらない椿の胸倉を摑み。

「!?」

欄干を乗り越えて放り投げる!

初夏とはいえ、まだ遊泳の時期ではない。

冷たい川の中に、椿は頭から叩き落とされた。