そんな時だった。

美緒御一行様を追い抜くように、1人の青年が走っていく。

風に靡く、腰の黒帯。

白い袖無しの道着を片肌脱ぎに着ている。

足元は、この寒いのに何と裸足だ。

その足元を気にする事なく、軽い足取りで走る。

走り込みに慣れた様子だった。

毎日何キロも走って、体を鍛えているのだろうと、容易に想像できる。

その後ろ姿に。

「あれ、先輩」

美緒が思わず声をかける。