そんな豆柴が、ふと。

「これは…何ですか?」

道場の隅に置いているものを見た。

それは、剣術修行でよく使用される巻藁に似ていた。

太い木材に藁を巻き、打ち込みの稽古に使用されるもの。

…ただ、それには藁は巻いてなかった。

木材ですらなかった。

鉄骨だ。

太い鉄骨が無造作に立てられている。

更に驚くべき事に、その鉄骨は数十ヵ所に斬撃痕があった。

斬ったのだ、鉄骨を。

刀で。

「それは椿の使ってる鉄骨だ」

壁際に座り、肩に柊を立て掛けた牡丹が言った。

「椿め、斬雨(ざんう)習得間近という事か」