ゴールデンウィーク後半に入ったある日。

その日は5月とは思えぬ肌寒い日だった。

夜半過ぎから雨が降り、明け方雨が弱まったかと思うと、冷たい風が吹き始める。

そんな、早朝。

「もうっ!」

ディアは学生寮の玄関先で、ずぶ濡れのリュークを叱り付けた。

「考えれば分かるでしょっ、何でこんな日にまで来るのっ!」

「俺は護衛だ」

「雨も降るし、今日は兄様や美緒と一緒に1日部屋で過ごすの!護衛してもらわなくても、大丈夫なの!」

「……」

しかし、護衛は番犬としての任務だし…と言いたげに押し黙るリューク。

待ての命令をきちんと守れなかった飼い犬のような、困惑した表情だ。

「…もう」

そんな顔をされては、これ以上叱れない。

「美緒、リュークを部屋に上げてあげても…?」

「構わないわ」

ディアの困った顔に、美緒は笑って見せた。