その日、天神地区は数年に一度あるかないかという大雪に見舞われていた。

交通機関は軒並み乱れ、バスも電車も運休。

これでは出掛ける事も儘ならないし、何より寒くて堪らない。

こんな日に外出していたら、美緒の風邪がまたぶり返してしまいかねない。

「今日は部屋でゆっくり過ごされる事をお勧めします…」

静かに呟く甲斐。

「…初売りとか行きたかったなぁ…」

やはり女の子だけあって、買い物好きな美緒。

新しい服が欲しかったらしい。

「何…買い物ならば普段でも出来ますよ。それより」

甲斐は窓の外を見た。

「折角の雪だ。こういう日の楽しみ方というのもあるのでは?」