天神学園のお忍びな面々

「何の任務か知らないけれど、昨夜夕城邸に忍び込んできて、坊に御用になったんだよ」

結構大変な不法侵入案件にもかかわらず、椿があっけらかんと言う。

あまつさえ朝食を共にしたというのだから、夕城の人々は肝が太い。

「今は夕城の虜囚だ。坊ちゃんの担当だから、幾らリュークの知り合いでも、はいそうですかと渡す訳にゃあいかねぇな」

そう言って、豆柴を摘まんだままブラブラさせる蘭丸。

豆柴はわんこ耳をしな垂れさせて、情けない顔をする(イメージ映像です)

「ご、ごめんなさいです、甲斐…栄光ある番犬の端くれたる私が、こんな失態を…かくなる上は切腹の上、自害するですっ!」

朱塗りの刀身を持つ愛用の短刀『八重歯(やえば)』を抜いて、引き締まった腹に切っ先を添えようとするものの。

「なかなかいい業物だ」

それもヒョイと、牡丹に没収される。

「ああっ、返すですっ」

「色彩銘刀には遠く及ばんが、こちらでも十分大業物に位列される刀剣だ。ヒノモトの刀剣製造技術の粋を凝らした逸品か」