瓦礫を踏み越えながら、椿は近付いてくる。

「いつだったか、リューク言ってたよね、『今足りぬと思うのならば、努力すればいい事』って。君の言葉に、随分と勇気づけられたもんだよ。その君が…」

四季を、振るう!

転がっていた人間大の瓦礫が、滑らかな断面を残して真っ二つに割れた!

リュークも初めて目の当たりにする。

これが夕城流極意・斬鉄。

「落胆させてくれるじゃないか。ウチの指南役をフッてまで、ディアを選んだんだろう?もっと堂々としないか」

「…俺は…」

「女々しい言い訳なんて聞かないよ」

四季の切っ先が、リュークの喉元に突き付けられる。

「どうせディアに想いを告げられればそれでいい、交際などと高望みは分不相応、なんて言おうと思ってんだろう?」

「……」

「『今足りぬと思うのならば、努力すればいい事』」

椿は切っ先を引く事なく、リュークに告げた。

「分不相応と思うなら、相応になるまで自分を高めな。一方的に想いを告げて満足なんて、聞こえの良い逃げだよ。指南役が泣いてまで身を引いた意味、よく考えな?」