スックと立ったエレナ。

その背中に。

「行くのか」

道場の入り口、凭れ掛かった牡丹が声をかけた。

「まだ帰っていなかったのですかっ。覗き見とは趣味が悪いっ」

指南役たる己に気配を悟らせぬとは腕を上げた。

些かの驚きを隠せず、エレナは狼狽する。

「…リュークは龍娘流を習得し始めたとはいえ、やはりアッパー系の技を得意とする」

牡丹は背を向け、道場から去っていく。

「奴に懐に飛び込ませるな。逆に言えば、距離を取って戦えば勝機はある」