とある放課後、夕城道場。

既に夕城三人衆への稽古も終わった静寂の道場で、エレナは正座し、傍らに菩薩を置いたまま目を閉じている。

(リューク…ディア…)

リュークとは、エレナが天神学園に編入してきた時からの付き合いだ。

彼女の作ってきた弁当を誉めてくれた事が、彼を意識する切っ掛けとなった。

夕城流の因縁の敵である龍娘流にリュークが入門した後も、彼への意識は変わらない。

倒すべき敵、しかしいつだって気になる殿方。

たかが弁当を誉められたくらいでと、笑いたくば笑え。

エレナにとっては、初めて慕う男性といってもよかろう。

だが…。

ディアとて、大切な親友だ。

リュークよりも知り合った月日としては浅い。

だが、深い浅いの問題ではないのだ。

エレナを先輩として、同性の友人として慕ってくれるディア。

彼女にはいつでも笑っていてほしい。

あの可憐な笑顔を、曇らせたくはない。