また桜の樹の下で、ワッと歓声が上がった。

誰かが何かやらかしたのだろうか。

…日が沈み夜が更けてきても、この季節だ、冬のように寒くなる事はない。

「とはいえ、リュークは道着1枚で…肌寒い事はないですか~?」

何ならサラマンダーを召喚してあげましょうかと、ディアが気遣うが。

「いや、大丈夫。ディアは優しいな」

スッと立ち上がるリューク。

…桜の花びらを運ぶように、柔らかな春の風がそよぐ。

「やはり番犬の頃から夢見た、憧れの女(ひと)だ」

リュークはディアを見た。

「出会う前から慕っていた」