ディアとは目を合わせないまま、リュークは語る。

「実は番犬時代から、ディア達の名前だけは知っていた」

「え?そうなんですか?」

ディアは目を丸くする。

勅使河原将軍家に仕える以上、護衛である番犬は、その家族構成や家系図にも詳しくなければならない。

ヒノモトから遠く離れた地ミルトゥワにも、将軍と血の繋がった兄君が存在し、その子息…レオノティスやツィーディアがいる事は知っていた。

ヒノモトは漸く白黒写真が普及し始める程度の文明レベル、無論レオやディアの顔などは知る由もなかったが。

花言葉『雄大』の名を持つ勇猛果敢な兄レオノティス、聖女のように清廉潔白な少女ツィーディア。

御伽話の中に出てくる王子様やお姫様のようなのだろうと、幼いリュークは憧憬さえ抱いたものだ。

現物は、些かハードコアではあったが。